かりんちゃんの随心遊戯日誌

ゲームの日記、たまに政治の話、香港の話

香港人が日本に「移住」しない理由

去年国家安全法が可決される際、日本でも香港人や人材を受け入れるような議論はしましたが、今はもう何もかも無くなったようですね。あの頃では香港人材を受け入れ、アジアの金融都市に育ってようという考えもありましたね…。

今日産経新聞を読んだ際、石平さんの香港人を受け入れようという記事を見て、去年のことを考えました。石平さんは元は中国人だから、香港人を助けたくてその記事を書いたんだろう。ただ、現実を見ると香港人が日本に移住することは、わりと現実的ではないに気がします。

ぼくは日本を愛しているから結局日本に渡りましたが、もしその「愛」が少しでも足りなかったら今は確実にイギリスに移ったと思います。

香港人がどんどん移民するが、イギリスに移ったのが多いのは、もちろん最大の理由はすごく簡単だからです。BNOパスポート持ちではネットで申し込んで、審査が通ったらそのままイギリスで移住可能、働くもいいし投票も可能、何もかも自由。さらにイギリスで6年を暮らすとイギリス国民になれる。イギリスの他にもカナダやオーストラリアでも香港人を受け入れる計画はありましたが、シンプルさや簡単さを考えると、イギリスは極めて魅力的であった。

かえて日本を見ると、日本で在留するだけでもいろんな手続きがいる。しかも武漢ウイルスで新規入国がお断りの状態。カナダやオーストラリアのような便利なPathwayもない。確かに日本を故郷と呼ぶ香港人がたくさんいますが、日本に移住することを考える香港人はかなり少ない。

 

しかし、最も根本的な理由は、実はその複雑な手続きや税金などではなく、「労働環境」である

 

香港人はよく日本に旅行するし、日本文化に詳しい香港人もたくさんいます。が、日本で暮らし生活すると言われると、大抵は「ノー」と答えます。理由としては、多くの香港人は未だに日本の労働環境は社畜生活と思い込んでいる。日本で生活すると香港より苦しいと考えており、残業やブラック企業のイメージが強いんです。実はぼくも去年日本で生活する前でもそんな懸念を抱いていた。IT技術者はきっと奴隷のように扱われるだろう、と。

香港人は働くのが好きなんですが、日本人と比べると、有給は全部使い切る、残業代はきちんと取る、自分の仕事が終わったら退社(同僚のことを考えません)、上下関係をそんなに厳しく守らない、「飲み会」などのような文化もない、という差があります。

なにより、日本のテレビドラマではそう映されたので、日本文化に詳しいが実際日本会社で働いたことない香港人にとっては、テレビドラマの日本は本物と認識している。なので、実際最近の調査では香港の労働環境は日本より悪いにもかかわらず、日本で生活すると「社畜だ」「奴隷だ」と強く勘違いしている。

そことこは、日本政府では誤解を解かないんですよね(とはいえ、実際伝統的な会社は本当にそうだろう)。なので「旅行はいいが、働くのは嫌だ」と思っている方が多い。最初はぼくだけかなと思ったんですが、いろんな香港の掲示板を観察すると、特に「移民は何処がいい?」という議論では、日本に関してはそういう書き込みが異常的に多いので、意外な落とし穴です(逆にこれさえ改善できていれば、喜んで日本に志望する人が多い)。

 

あともう一つは、日本語です。ぼくは日本好きすぎて日本語を覚えたんですが、実はよく日本に旅行するが日本語はよくわからないのが多いです香港人では。ぼくの母親みたいに、漢字を見てある程度意味を推測することは可能だが、五十音すら覚えてないのが多い。日本では一般生活だと英語は通用しません。別に香港人の英語はすごくうまいとは言えないが、多くのものは広東語以外で話せるのは英語ぐらいで、旅行ならともかく、実際日本語しか通用しない日本で生活するには極めて難しいだろう。

 

とはいえ、ぼくみたいな日本好きもいるから、敢えて日本に移住しようと考える人はまあいるはいるです。もっとも、イギリスのような欧州圏文化に馴染めない香港人は確実に多いだろうし。文化的に近い日本は魅力的な選択ではあるはず。香港で不動産持ちであれば(例えばぼくの母さん)、億万長者だろう。そういう「日本好き」を受け入れると悪い話ではないと思う。少なくとも、中国の「スパイ」よりは、確実に。

 

ただ、今の日本政府はそんな余裕があるのかなと、ぼくは疑問を持っています。