かりんちゃんの随心遊戯日誌

ゲームの日記、たまに政治の話、香港の話

JUDGE EYES:死神の遺言

レビューバージョン PS4 Pro

「キムタクが如く」とも言われる作品。実際、主人公が変わった、一部のプレイに探偵っぽい要素を入れた以外、ほとんど「龍が如く」シリーズに似たようなもので、このゲームは如く系譜の外伝といってもいいぐらい。

事前ではシナリオが好評だった『龍が如く0』の制作陣がメインに担当するという点で、シナリオは特に期待されていた。結論から言うと、シナリオに関しては概ね期待通り。とくに『龍が如く5』と『龍が如く6』、あと最近の外伝『北斗が如く』のひどいシナリオと比べると、このゲームのシナリオはさらに光る。

もっとも印象的で、個人的にもっとも好感を持つのが、主人公の八神キムタクが本当に主人公らしいとのこと。「龍が如く」シリーズの桐生さんは最近、いつも何も知らないというか、受動的なポジションにいるのがほとんど。いつも「え?」、いつも「なに?」、最近の作品では主人公らしいことをしたのは実はあまりなかった。少なくとも僕にとって印象的なシーンはあまり無く、終盤になるまでずっと、なんでこうなるか「自分でもよく分かんないんすよ」立場であり、ただ勢いを任せるだけであった。

ただ、この八神キムタク、主人公は探偵だからか、あるいはキムタクを起用したからか、言論から行動までも、いつも能動的に物語を動かすこと。印象的なセリフが多いはもちろん、八神が動かなきゃそもそも事態がここまで発展することはない、受動から能動に、事態を新しい局面に導く。この明確的な違いが、正直「龍が如く」シリーズにはなかったので、新鮮感があるというか、久しぶりに主人公らしい主人公に出会えた。

中でも、「人が一番残酷になれるのは自分に正義があると思っている時だ」というセリフ、とても印象的で、名言です。桐生さんでもこんなかっこいい言葉を発したことはないんですからね。

単発の新規作品で、キャラは全部今まで「龍が如く」シリーズでは登場してないが、主人公だけではなくサブキャラまでも印象的。全編を通じて、キャラの描写がとてもうまい。限られたシーンでも個性が出る。正直、実際の戦闘では頼もしいとは言えないが、この作品の仲間キャラが好きですね。さおりさんや星野くんのことは、ここまで描かれるとは最初では思ってなかった。またときに思う、もしFF15のグランディオは海藤さんみたいな陽気キャラだったらよかったかもな。

シナリオが上手いのはキャラクターだけではない。事件はどんどん真相が明らかになるタイプだが、違和感はそこまでないのが大事。少なくとも訳もなく突然な裏切りとかはなかった。もっとも、探偵っぽいものだからこそ、変なことはできないかもしれないけど、事件の全容から主人公の心境変化、細かいことは雑な部分もあるけど、ブレることはなくちゃんと伏線を回収していた。ただ、少し残念だったことは、探偵だからこそ、探偵らしい終わり方が欲しかった。最後だけではなく、ほとんどのイベントも結局力任せの仕事で、ヤクザと同じではないか。あと、モグラなどはせめて推理して当たってほしかった。そもそも全編的に推理要素はあまりなく、尾行とか観察とか変化も少なく、議論などもない以上、探偵アドベンチャーと期待するとかなりがっかりする内容。この部分さえ良ければ龍ともっと差別化できたのに、結局本当にただのキムタクが如くとは残念でしかない。

 

と、しかし、こんな作品には大きな不満点がある。それは寄り道。特に如く系譜では、寄り道のミニゲームなどは結構重要と思いますけど、このゲームではこの部分があまり良くなかった。いいえ、サブクエストの内容は基本これまでの如くと同じく、ぶっ飛んだ内容なのでそこは心配はいりません。ただ、6でもそうであったが、今回は新規IPという立場なので、ほとんどのミニゲームは今までの龍の使い回しはどうかと思います。もちろん、新たに用意されたものもあるが、ドローンレースもVRすごろくも、どれも面白い、というとちょっと微妙ですね。一番まずいのはテンポが悪い、時間がかかる。特にVRすごろく。そして、もう一つ、クラウドカンパというものですが、これ、そもそも”ミニゲーム”と言っていいのか?

もちろん、最近の如くのミニゲームは基本「そんなもん」だから、これだけではそこまで苦痛ではなかった。本当に、許さないのは本作の真の”裏ボス”キムさんとその京浜同盟とのイベント。気付けば、ゲームで用意されたコミュアプリではキムさんのスパムメッセージが溢れている。内容もテンプレートメッセージ。

少し解説しますが、この京浜同盟イベントは、一定時間ごと起きる、予兆は特に何もなく、キムさんが突然「京浜同盟が暴れている!」というスパムメッセージを送ってくる。そして危険度が100%と表示され、街中のエンカウント率がグッと上がる。ほぼほんの少し歩くと京浜同盟のチンピラが絡んでくる。そしてストーリーで登場済みの京浜同盟「ボス」も、街中のとこかで現れ、そこを通すと強制的にボス戦。このイベントを解消するためには、危険度を0%まで減らす必要がある。時間を待つか、あるいはボスを倒すと25%が減る。時間を待つだけでは時間がかかる以上、キムさんの嫌がらせスパムが飛んでくる。ボスを倒すと、報酬はもらえるが、そこまで珍しい素材でもなく、ボスはどれも固く面倒くさい、しかもこのゲームでは厄介な「致命傷」(特定場所やアイテムでしか治れない)を受ける可能性があるので、効率的とは言えない。

もはや嫌がらせイベントとしかないが、何よりもその発生頻度がとても高い。ストーリーを追うときでも強制的に発動することがある。面倒くさいのは当然だが、なぜ探偵ゲームにこんなものを用意したか理解し難い。このゲーム最大の致命的なことといえば、間違いなくこれと思います。

ただ、全体から見ると、シナリオは良かったし、キャラの描写もよかった。ゲームとして面白いかどうかは別にして、良いキムタクドラマを見たという感じ。アドベンチャーゲームではシナリオが大事なので、このゲームは良作の部類と思います。少なくとも『龍が如く5』や『龍が如く6』よりは、満足感が大きい。

ゲーム内容GREAT システムSTANDARD グラフィック&演出STANDARD サウンドSTANDARD

GREAT