人気作品キャラのゲームは、その人気の高さのゆえによく悲しいことを産む。ほとんどの”キャラゲー”は、どんな出来でもキャラの人気でなんとかなるから、たいていは粗製乱造され、いつからかキャラゲー=面白くない、ハズレゲーと定着されてしまう。これは国内だけではなく海外でもそうであることに、スパイダーマン自身も例外はなかった。
この定律はPS3のRocksteadyのバットマンのアーカムシリーズの登場でやっと解放される。バットマンのアーカムシリーズの評価はほとんどゲーム自体の出来であってバットマンの人気ではない、むしろそのクォリティの高さのあまりに、ゲーム業界に置いてはバットマン=AAAクォリティといつの間にか定着されました。しかし、スパイダーマンは相変わらずアクティビジョンのおもちゃのままだった。
あまりにも出来が悪くとんでもないクソゲーと悪評された『アメイジングスパイダーマン2』から4年、スパイディはやっと晴れにハイクォリティーゲームの仲間になった。
開発は『ラチェット&クランク』のインソムニアックゲームズだから、しかもSIE主導だから、クォリティは高いと事前はある程度予想したが、やはりゲームの技術の高さに感動してしまう。グラフィックはもちろんだが、何よりこのグラフィックでオープンワールド、そして路面ではたくさんのNPCが歩いている、車が運転している。終盤ではさらにビルのあちこちでたくさんの敵が配置された。しかし驚くことにフレームレート落ちは一切しない。何こともヌルヌル。どこでもいつでも楽しいウェブスイングを楽しめる。この理想的なスパイダーマンゲームがやっと実現された、この違和感が一切なく、誰でも普通にスパイダーマンアクションを楽しめる凄さ、実はPS4の性能では普通じゃないけどさ。
もちろん技術の話ではゲームの面白さに繋がらないが、その技術の完成度の高さによって、スパイダーマンにあるべきアクションと動きが、誰でも簡単の操作で楽しめる。そしてこのPS4クォリティのグラフィックで気持ちよく体験できる。キャラゲーはやはり、その人気キャラになれること、演じること、動かすことが一番大事ですよね。Rocksteadyのバットマンのアーカムシリーズの成功のように、インソムニアックゲームズはみんなの夢を叶えた。そしてスパイダーマンをゲームのあるべき姿に昇華しましたね。
直前では『バレットガールズ ファンタジア』や『リトルドラゴンズカフェ』をやったので、そのクォリティの段違いはやはり歴然ですね。何よりもロードが短い。リトライとかでは微妙にロードが入ってるけど、全体を考えると全然気にしないレベルで、そこもまたすごい。チェックポイントも多いので、結局やられてもリトライはあまり気にしないこと。やはりロード時間は大事ですね。
ゲーム自体はごく典型のオープンワールドゲーム。メインクエストを進んで、マップに様々なサイドクエストや収集要素が用意され、そしてサイドクエストや収集要素などでレベルアップし、スキル、スーツやガジェットを解禁、強化する。うん、ゲーム内容自体はかなり普通、おそらく『アメージングスパイダーマン2』を綺麗にしただけとも言える、が、ゲームの完成度や出来が高いであれば、普通の内容でもある程度昇華されることが、このゲームで証明したね。
何よりメインクエストやキャラクターの描写はかなり映画的。スパイダーマンの映画を見て、動かすのような感覚。やはりシングルプレーヤーのゲームでは、ストーリーとキャラクターが何事よりも大事。とくに、スパイダーマンのゲームだけど、ピーター・パーカーの部分もかなり重点的に描写することが、『アメージングスパイダーマン2』との最大の差であろう。MJとの関係、メイおばあさんとの関係、博士との関係、そして登場はしてないがハリーとの関係なども、映画のように描く、ドラマチックで面白い。スパイダーマン・ピーター・パーカーの心境の変化をここまでよく再現することは、開発者のスパイダーマン愛をよく表現した同時に、このゲームはもはやただのゲームにとどまらず、本当にひとつ「作品」として仕上げられたんですね。そしてこれこそが、シングルプレーヤーゲームのあるべき姿です。
戦闘については、良く難しいと批判されたが、それはおそらくまだこのゲームの戦闘システムに慣れてないだけと思います。実際チュートリアルミッションでも数回は死んだが、それ以降はめったに死なないんです。確かに序盤のチュートリアルミッションがいきなりたくさんの操作を教えるのがちょっと不親切ですね、そこが不満点であること個人的にも同意だが、難しいというより慣れてないだけです。物語を進んで、様々なスキル、そして何よりガジェットが解禁されたら、どんどん、スパイダーマンっぽいアクション・戦闘をできるようになります。バットマンではカウンターメインだが、スパイダーマンでは回避(ドッジ)メインです。序盤では苦戦しやすいと思うけど、パーフェクトドッジの感覚を覚えたら、戦闘がどんどん楽しくなりますよ。かなり癖になりそうです。そしてスパイダーマンといえば、やはり格闘よりも、様々なウェブガジェットで敵をやっつけるほうが正しいだろう?このゲームでもこのことをよく表現する。硬い雑魚でもガジェットをうまく利用すれば簡単に片付ける。中盤以降になると、みんなもかっこいいスパイダーマンになれるから、むしろ難易度のバランスはうまいと言える。ただチャレンジクエストの難易度は、たぶんあれだけはゲームと言うよりランキング感覚にやらないとだめかもしれないね。あれだけはちょっと擁護できません。
ただのキャラゲーにとどまらず、一つスパイダーマンの作品として仕上げられた。グラフィック・技術・ストーリーはどれも高水準、誰でもヌルヌルスパイディアクションを楽しめる。そんなもの。日本語の吹き替えもかなりハイクォリティーで、キャラの性格をよく表現することも素晴らしい。敢えていうと、MJやマイルズのステルス部分はちょっとストレスが溜まるね。物語としては必要だろうけど、ゲームとしてはやって楽しいか?とちょっと疑問を浮かぶ。あとやはり収集要素はかなり前世代的、確かにそれぞれ専用台詞などは用意されてるが、やってることはそんなに変わらないから、いつか飽きるという感じ。でも、不満はたぶんそれぐらい。ほかはほとんど満足、しかもこのゲームの影響を受け、またスパイダーマンの映画を見たくなってきた。
あれ、これこそキャラゲーに必要なことでは?
ゲーム内容EXCELLENT システムPERFECT グラフィック&演出EXCELLENT サウンドEXCELLENT