かりんちゃんの随心遊戯日誌

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レビュー:英雄伝説 黎の軌跡Ⅱ -CRIMSON SiN-

注意:レビューは完全ネタバレです

レビューバージョン PS5

前作は軌跡シリーズの新章として、程よく評価に落ち着き、共和国編への期待を膨らませた。過去作を振り返ると、1作目は大抵プロローグと顔合わせという位置なので、今作はいよいよ共和国の本筋に突入するかと思われたが、結局のところ悪い意味で裏切られた。

 

もし一言で本作を評価すると言うならば、本作はまさしく前作『黎の軌跡』の真っ逆であった。前作はシステムがまだ試行錯誤の段階で、UIを含めて遊びづらい部分はありましたが、今回では戦闘バランスを含め、全体の完成度がより洗練され、非常的に遊びやすい作品ではあった。一方、好評だったシナリオ(とはいえ、悪までプロローグ位置としては)が今回ではタイムリープ乱発、意味がない無関係な話が話を引っ張りすぎて、ストーリーに全く進展がなく、おまけにキャラクターの評価まで改悪し、良いところまったくなく、とても残念な内容でした。

 

まず良い面を語りましょう。前作では戦闘一新など、色々な試みが導入されたが、行動順が分かりづらいなど、システム面では若干不親切でしたが、今回ではより洗練され、非常的に遊びやすい内容でした。戦闘バランスも程よく、敵の割り込みSクラフトも丁度よい調整であり、アーツは確かに終盤ではぶっ壊れるが全体的に手応えがあり、戦闘は割と楽しめた。新たに導入されたEXチェインも非常的に有能なので、雑魚戦はもちろんだが、ボス戦で敵をスタンにする戦法もとても有効であり、戦術の幅を広げた。また、前作では不評だった攻撃演出が長すぎるということも、今回では戦闘演出のスキップ機能が導入され、テンポが格段に向上し、戦闘はとても快適だった。

それ以外では、ショップの新規商品のNew表記や、読み込みの快適さなど、どれも良い改善である。とりわけハイスピードモードの存在が、もはや今後デフォルトにしてもいいほどのありがたい機能でした。特に今回では広いフィールドが存在しているので、ハイスピードモードのお陰で移動も快適になったのは間違いない。

 

もちろん不満点もある。例えばクエストのLGC選択は今回では本編ストーリーもだが、サブでも影響がまったくなく、存在意義がわからない存在になってる。一部新しく導入されたミニゲーム、例えばハッキングやFIOの潜入などは面白いとは言いづらく、とりわけ尾行はただストレスが溜まる仕様であり、システム面の汚点となった。カードゲームの「セブンスハーツ」は程よく遊びやすいが、運の要素が強すぎるため、勝ち負けは最初のカード配りでほぼ決まっており、楽しいかどうか正直疑問でした。

また、空3rdや創の「夢幻回廊」ようなやりこみダンジョン「お伽の庭城」は今回はかなりの劣化仕様で、ダンジョン自体も非常的に単調であり、個人的にやや期待外れでした。せめてクリア条件にもっと変化や、宝箱にもっと良いものを用意しないと、正直やる意味があまり無いという。

そして、ミスティックキューブという×長押し仕様は、コントローラーに悪い影響しかないので正直やめてほしい。見て気持ちいいのはまあそうですけど、それぐらいではゲームの面白さに繋がらないので、シンプルに創のようなガチャ仕様のほうがよかったのは本音。

 

とはいえ、ミニゲームはやらなくてもゲームの進行には支障ないし、庭城などもあくまでも「おまけ」。LGCはやや残念だが前作の分岐を考えると、ストーリーに影響がないのは最初から承知の上で、最初から特に期待してない。なのでこのへんの不満点は実に大したことはない。これから話すことに比べ、まだかわいいものです。

 

さて、本作致命的な部分は、避けて通れないのが「シナリオ」です。

今回最大の問題は、まず共和国編の第二作なのに、本筋が全く進展しないし、先も見えない。結社や大統領側はまだ動いてないので大きな動きもなく、至宝の話はもちろんだが、前作残された謎、特に主人公関連がほとんど何も話してない。逆に終盤までは創のスウィンやナーディアが話の中心を握っており、そして蓋を開けると敵のガーデンマスターはただの使い捨てキャラで、急に出てきた共和国の歴史人物(しかも本編ではこれまで特に重点的に言及されておらず、伏線が殆どない)。PVで散々煽ってきた最大級の劇場型犯罪はただの島巡回、そしてグレンデルの謎に関係があると思われた「グレンデル=ゾルガ」や「緋のアルテラ」は、どれも本筋とは無関係な話であったのが犯人であろう。

「緋のアルテラ」の本体がラピスと、ガーデンマスターはエース(すーなーの兄)のコピー(しかも外見のみ)ということを考えると、今回は「黎の軌跡」の作品というより、『創の軌跡2』を名付けるほうがしっくりくる。

また、「グレンデル=ゾルガ」の中身はディンゴという、前作では悪までそこそこ目立つのサブキャラクターにとどまり、確かに死は衝撃的だったが、そこまで思い入れ深いキャラクターではないと多くのプレイヤーも思うだろう。そもそも非戦闘員だったディンゴが簡単にヴァンを圧倒するほどの力を持ってるのが違和感だった。これまでヴァンや事務所の面々の努力は何だったのかという。

また、本作シナリオの中核を担ったタイムリープだが、最初はまだインパクトがあるが感覚が次第に薄れ、第III部に至ってはやられ方が雑になっており、もはや単純にタイムリープをやらせるためのシナリオにしか見えなくて、感動どころか呆れてしまう。正直第III部Bのマクシムのタイムリープは爆笑しました。タイムリープだと発動する側面に何かを犠牲しなければならないのが常道だが、本作では「ドラゴンボールZ」の「でぇじょうぶだ。ドラゴンボールで生きかえれる」のような感覚でやってしまい、これまで築いた「死」の重さすら消してしまう。

まして、敵組織が本格的に動いてないだからか、第III部は洗脳とか内輪争いばかりでした。しかも一回ではなく何回もやってくる、そしてタイムリープで全部なかった事に。フェリちゃんが存在感が薄いだからといって、洗脳で存在感を高めるのはあまりにも酷い。ヴァンがハルの罠にハマったのもおかしい、今まで培った嗅覚はどこにいったか、前作のヴァンの活躍を考えると、このようなわかりやすい罠にハマるとは到底思えない。そしてシズナもそう、「タイムリープを試したい」みたいな気持ちでやられるのは、もはやギャグにしか見えない。ああっ、不遇と言われたジンさんが今作で評価が地に落ちるのも仕方ない。準S級の理の達人の見せ場はただハシゴ下しだけだからな。

あるいみ、本作のシナリオはいままで軌跡シナリオの悪い部分が全部集約されたものであり、とても擁護しがたい作品ではある。すでにシリーズの売上が微妙になってるのに、このような物を出してファンを更に追い出す余裕、どこにあるだろうか。

 

本筋に進展がなく、無意味なタイムリープ乱発の結果、さらにキャラクターの風評まで傷をつけた。登場してないベルガルドは本作出てないのは正解ではあると言われるほど。本作はファンディスクで別にやらなくてもいいとよく言われているが、今回で判明されたことを考えると、正直同意せざるをえない。むしろ本作を飛ばすほうがキャラクターの評判を保つ、なにせ判明されたのはニナの正体ぐらいであり、しかも中身がない呼び方だけという。3はどういう展開なのかよくわかりませんが、今の段階で本作で次回以降に影響しそうなものは見えないし、ガーデンマスターもディンゴも綺麗に退場したので、あるいみ第8ゲネシスだけのために無理矢理に話を延長させたって感じ。

ただ、物事には悪い面もあればいい面もある。本作で庭園とかDG教団とかの話を終わらせたため、次回作でそのようなものが本筋を邪魔することもないだろう。ストーリーの「雑草」を掃除する、本作の存在意味をあえていうとここにあるかもしれません。

 

断章以降の内容をよく考えると、4spgなどもそうだが(話が無い手配魔獣ばかり)開発時間不足でかなり雑な部分が数多く点在する。なので今回の元凶はやはり開発時間不足ではないかと考えられます。そもそも上記のタイムリープ乱発も、シナリオをもっと時間をかけて練り込めば、おそらくより納得する形に落とし込む可能性があり、やはり1年で1作はちょっと無理かもしれない。なので、次回作の完結編は、もっと時間をかけてシナリオを練り込んでほしい。そもそも、今作ではシステムが完成したので、不安要素は本当にシナリオだけになるかな(もっとも、次回作で余計なことを入れるとそれはそれで論外だろうけど)

 

因みに、音楽に関してはいつも通りハイクォリティーで、そこは期待通りであった。なので、今作の問題は本当にシナリオ一点に集約される。アクションゲームだとそれはそれで別に構いませんが、RPGでしかも軌跡ではシナリオが重要だと思うので、そこは反省するべき。確かに『閃の軌跡I』や『閃の軌跡III』のような唐突な終わり方は批判されても仕方ないが、綺麗に終わるためにこの形になるのも続編作品としてはどうかと思います。ただ、演出面に関しては本当に大幅に進歩したのは確か、特にラスボス自体はともかく、ラスボス戦の演出はとても良かったと思います。だから余計に、シナリオだけが今作の致命的な部分というのは、本当にファルコムさんとしてはらしくないことであり、大変惜しくて残念でした。

 

ゲーム内容
+総プレイ時間は若干減ったものの、60時間以上は楽しめる内容
-本編ストーリーが進展がない上にしょうもない雑なタイムリープが乱発し、キャラクターへの評価まで傷をつける
-敵キャラクターに魅力がなく、一部では主人公との接点もないゆえに唐突という印象を払拭できない
-ゲーム自体は問題ないがシナリオ重視のRPGにこの暴挙は残念だが致命的
-一部のミニゲームがつまらない以上にストレスがたまる

システム
+あらゆる面が前作より改善し、とても快適で、遊びやすい出来であった
+ハイスピードモードはとても便利で快適、今後もデフォルト搭載するべき
+UIが前作より洗練された

グラフィック&演出
+前作とそれほど変わらないものの、一部のモーションが格段向上
+イベントのグラフィックが確かな進歩を見せた、ラスボス戦の仕掛けと演出は評価する

サウンド
+概ね期待通り
-黎の雰囲気かどうかわかりませんが、プレイですごく印象に残るBGMがあまりないのがいささか残念

POOR